ツバメに学ぼう ~生き抜く姿~

今年も豊中不動尊にてツバメの子育てを観察することができました。特に、今年はテレビ大阪とコラボ―レーションし、ツバメの巣作りから子育て、巣立ち、ねぐら入りまでをドキュメント化する事になりました。ここでは、それまでの記録を紹介させて頂きます。
観察期間;2020年5月17日~8月14日
観察地点:豊中不動尊・豊中赤坂下池
観察協力:豊中不動尊スタッフ
撮影協力:テレビ大阪
観察経緯:毎年、豊中不動尊におけるツバメの繁殖には注目し、バス停を利用した時にはお参りの際にはチェックしていました。ツバメの巣作り、子育て、巣立ち、塒入りといった流れをいつの日か映像化して身近な渡り鳥の事をもっと知ってほしいという思いがありました。私自身、今年は、新型コロナウイルスの影響でツアーガイド業も減少し、観察する機会を得る事ができ、お世話になっているテレビ大阪のカメラマンの方に提案すると興味を持って頂き、ドキュメント化する事になりました。

ツバメとはどんな鳥


ツバメ Hirundo rustica (ヒルンド ラスティカ:農村にいるツバメの仲間)
特 徴:日本で子育てするために東南アジアから渡来する夏鳥。民家や商店、寺社等に巣を作る鳥。特 徴:成鳥は額と喉は赤褐色、頭から背中にかけて青色光沢。雄は雌に比べて尾が長い。腹は白。特 徴:ヒナは全体的に色が鈍く、背中の色は光沢が無い。尾が短く、嘴の基部が黄色。
暮らし:3月中旬に飛来。4月上旬に巣作り・中旬に産卵し抱卵。5月上旬に孵化、中旬から子育て6月上旬に巣立ち。中旬に2回目の巣作り開始。7月上旬に子育て、下旬に巣立ち。8月上旬から下旬は赤坂下池にて「ねぐら入り」。9月ツバメ減少、10月、すべて南国へ。

写真(上)はツバメの♂。尾羽が雌に比べて非常に長い。

写真(上)はツバメの♀。♂に比べて尾羽は目立たない。

ツバメの正面顔

ツバメが不動尊寺務所に入ってしまい保護した時の写真です。
ツバメの正面顔は彫りが深いです。ツバメは直線を時速約50kmで飛んでいると言われています。
飛んでいる昆虫を餌としている限り、風の抵抗を受けにくい構造。額は平坦で目元は風の抵抗を弱めるために少し凹んでいます。

豊中不動尊における営巣事情

1996年頃から巣作りを確認。豊中アジェンダの調査では2006年から巣の確認がされている。
谷住職に変わってからご理解があり、更に営巣数が増えている傾向があります。毎年、5月~7月にかけて平均6~8個、営巣を確認しています。今年の結果ツバメの子育ては2回、行われます。
前半は5月~6月、後半は6月下旬から7月下旬。
前半では境内正面左側にて繁殖していた巣で6/1に5羽のヒナが無事巣立ちし、右側にて繁殖した巣が6/3に4羽のヒナが巣立ちしました。また、スタッフ出入口にて繁殖していた巣は5/25に5羽巣立ちし、灯篭に営巣したところは6/22に5羽巣立ちしました。スタッフ出入口は5/25に5羽のヒナが巣立ちしました。
後半は、3ヶ所の営巣がありました。前半と同じく、境内左右に各1カ所、またスタッフ出入口にヒナが生まれていました。しかし梅雨の長雨により、給餌ができず、巣内で餓死したり、栄養不足の影響で落鳥して死亡が続き、何とたった1羽の雛しか巣立ちできませんでした。その結果、前半と後半で成功した巣と巣立ち雛は合計で6巣20羽となりました。

ツバメの巣作り~巣立ちまでの記録


写真:出来上がった巣
解説:ツバメは、本来、田んぼなどで泥を集めて、自分の唾液を絡ませて、団子状にして口にくわえて、積み重ねて巣を作ります。しかし、都会では田んぼが無ければ工事現場や土の水溜まりのある場所で泥を見つけてきているのだと考えられています。


写真:産卵
解説:平均的に卵を5個から6個、1日1個の割合で産卵し、最後の卵を産み終わった所で抱卵になります。約2週間抱卵します。

写真:ツバメの抱卵斑
解説:ツバメだけでなく、鳥類は地肌で卵を直接温めます。その為、繁殖期になると羽が部分的に抜けます。

写真:ヒナの誕生
解説:卵の殻が巣の外に落ちているので孵化している事を確認できます。生まれたての雛は
薄ピンク色で全体に産毛で覆われています。
写真:孵化して8日目 偶然、落ちていたヒナを見つけて撮影。
解説:この頃になると、翼の軸が見え始めています。
写真:孵化して15日目
解説:巣から顔を出して活発に動き、餌をもらいます。まだ、飛べません。頭に、産毛が残っています。
写真:孵化して20日目
解説:ツバメらしい顔となり、より活発的に動きます。羽根を良く伸ばしたり前後左右に入れ替わります。
写真:孵化して22日目
解説:この頃になると、親鳥は殆ど給餌を行わず、巣立ちを促します。また、ヒナも巣立ちのタイミングを見計らいます。
写真:巣立ち
解説:無事に巣立ちしたヒナたち。写真には3羽ですが近くに2羽止まっていました。
写真:巣立ちたした夜
解説:巣立ちした夜は5羽揃って、巣に戻っていました。でも翌日からはもう姿は見られませんでした。

ツバメは1日、餌を何回運ぶの?


給餌回数を1時間ごとに数えてみた日がありました。結果は以下の通りでした。
月 日:5月28日
時 間:9時~13時 4時間
9時台:  ♂23回  ♀30回
10時台:♂21回 ♀17回
11時台:♂13回  ♀10回
12時台:♂20回 ♀24回
合 計:♂77回 ♀81回
♂♀合計158回 約平均1時間当たり雌雄で39回給餌 8時間で312回の給餌
給餌間隔は平均1.03分おきに給餌。主にハエからトンボまでの大きさでヒナの成長具合で変化します。

繁殖期のハプニング


繁殖期に必ずあるのがカラスやイソヒヨドリによる、巣に対する直接攻撃による捕食や巣から落下してからの死亡というのがあります。今年もヒナが落下し、親から見放されたのを確認し、一時的に保護、給餌しましたが死亡してしまったという事例もありました。最後は樹木葬として埋葬しました。

鳥類標識調査の実施


千葉県我孫子市に(公財)山階鳥類研究所があります。研究所では渡り鳥のルートの解明、寿命等を科学的に野鳥に足環を装着して調査研究する機関です。ツバメが来年、同じツバメとして返ってくるのか、どこかで再捕獲される事で年齢や渡りルートを解明する事ができます。偶然、不動尊の住宅街の近くで安全に保護、回収されたツバメのヒナにリングを付けました。ツバメの右脚に足環が付いているのが分かります。

ツバメのねぐら入り


この池は赤坂下池です。グランドが見える側が北です。ヨシ原が北側、西側、南側に広がっています。このヨシにツバメが止まります。
豊中市立第2中学校前に農業用水池があります。住宅街の中の池で、8月に入ると夕暮時18時30分頃に豊中も含め、北摂で巣立ったツバメが一斉に集まります。その数は約18,000羽が集まってきます。8月のお盆前後が最大の数になります。2020年は15,000羽位だとカウントしています。例年より減少した原因は、梅雨の長雨だと思っています。ヒナの一番成長盛りの時期にあまり給餌ができず、餓死していた事例がありました。
ツバメは1回目、2回目の子育ての後、すぐには南の国へは旅立ちはしません。巣立ちしたヒナは約1ヶ月、親鳥と共に行動して飛ぶためのトレーニング、餌の取り方などを学びます。そして8月になるとヨシ原に夕方に集まってきて情報交換をします。8月20日頃になると、極端に数が減少したように思います。旅立っているんだなぁと思っています。

ツバメから命の大切さを学ぶ


①ツバメは巣作りから巣立ちまでを雄雌、協力し、助け合って約2ヶ月で終了します。
②人が行き来する軒下に巣を作り、天敵(ヘビ・カラス・)から身を守る賢い鳥です。
③晴れの日も、雨の日もヒナのために一生懸命に休むことなく餌を与えます。いつ自分の餌を食べているのかと考えさせられます。1羽でも自分の子孫を残す為に、努力します。ヒナが5羽生まれても来年、戻ってくる確率はとても低いです。

大変お世話になりました。


3ヶ月間、このメンバーを中心、ツバメの生態を追いかけました。左から、テレビ大阪の増田カメラマン、豊中不動尊寺の住職、村田さん、谷さん、そして私の4名で観察しました。また、観察では、期間中、豊中不動尊寺のスタッフの方、参拝者の方により、暖かく子育てを見守って頂きました。イベントとして7月に「ツバメに学ぼう」というお話会、8月に「ツバメのねぐら鑑賞会」も開催し、多くの方にご参加頂きました。ホームページとなりますが本当にありがとうございました。
9月9日(水)にテレビ大阪「やさしいニュース」チャンネル7にて
3ヶ月間の記録「ツバメから学ぶ ~生き抜く姿~」が16時59分から放送される予定です。ぜひ、
お楽しみください。よろしくお願い致します。

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